厚生労働省の参考資料に令和7年には日本における約700万人、約20%の人(高齢者の約5人に1人)が約認知症の有病者になると推計がでています。認知症になると財産の凍結、不動産の契約もできません。そこで認知症になる前に財産管理を家族に任せる仕組み「家族信託」が2007年に信託法が改正され注目されています。家族信託の説明をさせていただきます。
認知症になったら
「親が認知症になったのですが、これから相続対策をしておき
たいのですが、何かいい方法はありますか?」と相談を頂くこ
とがあるのですが、認知症になった後では・・・何もできません。
認知症になると「財産の管理」が凍結されます。
・不動産の売買
・預貯金の引き出しや定期預金の解約
・株の売買
・遺言書の作成
・契約の締結
・遺産分割協議
・不動産の管理
不動産の管理とは、リフォームや取壊し、アパートを所有している
場合は賃借人と契約もできなくなります。
上記の事が何も手付かずになると、親族の方たちは困ります。
認知症により財産の凍結した場合は「成年後見制度」を利用するしかありません。
「成年後見制度」があれば、認知症の後でも問題ないという考えもありますが
成年後見制度って大変なんです。
成年後見制度を説明します。
成年後見制度
成年後見制度は、親族、司法書士や弁護士が本人の代わりに
「後見人」(こうけんにん)となって財産管理や契約行為を行う
ことができる制度です。運用は家庭裁判所がしていますので
財産は家庭裁判所の監督下に置かれることになります。
後見人の役目は、その人の財産を守ることです。財産を運用することが
役目ではありませんので不動産の売却なども合理的な理由が無い限り
は簡単に売買もできません。
成年後見制度は2種類ありまして、本人が元気なうちに後見人を決められる
「任意後見」、すでに判断能力が不十分な場合に裁判所が後見人を決定す
る「法定後見」です。
成年後見制度は
・本人が亡くなるまで後見が続きます。
・弁護士や司法書士などの専門家が後見人に選任されると報酬が発生します。
本人の財産額により、報酬は月額2~6万円。
・親族が後見人等に選任された場合、成年後見監督人が選任されることが
あります。弁護士や司法書士が選任されやすいので、月額1~3万円かかる
事があります。
・本人の財産は裁判所の監督の下に置かれるので、原則本人のためにしか財産は
使えなくなります。
・後見制度は財産を守ることが目的です。不動産の活用、生前贈与などの相続税
対策はできません。
後見人となった親族は労力も費用も大変です。
そこで、今注目されているのが「家族信託」です。
家族信託の説明をいたします。
家族信託とは
家族信託とは財産の管理や承継をご自身の家族や親族を
受託者として財産管理を任せる仕組みを「家族信託」といいます。
認知症にかかる前、元気なうちに託しておく制度です。
わかりやすく言うと、管理をする権利だけを移して
お金をもらう権利は所有者に残します。
不動産の管理は信頼できる親族や家族に任せて
家賃や売却代金はそのまま所有者の手元にいくのです。
後見制度の場合は費用が毎月コストがかかります。
この「家族信託」は最初の手続きの1回だけになります。
相続対策もできますし、遺言書の代わりとしても使える
とても良い制度です。
しかし家族信託の契約は認知症後にはできません。
判断能力がある時までに家族信託の契約をしないといけません。
・委託者 父 財産を持っていて財産の管理を託す人
・受託者 子 財産を預り管理や運営をする人
・受益者 父 財産から生じる家賃や売却代金、利益を得る人
受益者は図のように父でなくても設定ができます。
家族信託を利用する場合は、委託者と受託者で信託契約を締結
しなくてはいけません。
流れですが
・家族で話し合い合意する
↓
・家族信託の契約書の作成
↓
・公証役場で家族信託の契約締結
↓
・信託不動産の登記手続き
↓
・金融機関での信託口口座の開設と送金
↓
・信託を開始
となります。
契約書に決めておく内容になります。
項目 | 内容 |
---|---|
信託の目的 | 目的を決めます。なぜ信託によって財産管理をするか。 |
委託者 | 財産を託す人(預ける人)。財産の所有者。 |
受託者 | 財産を託される人(管理する人) |
受益者 | 財産から得た利益を受け取る人(委託者になる事が多い) |
第二受託者 | 受託者が管理できなくなった場合に備え決めておく |
第二受益者 | 受益者が亡くなっても契約を継続させたい場合に (例)・受益者 父 ・第二受益者 母 |
信託財産 | 信託として預ける財産(現金、不動産など) |
信託財産の追加 | 信託財産の追加について定めておく |
信託の内容 | 管理運用処分を詳しく決める。「不動産の活用に関する方針」 「看護療養費の支払い方法」等 |
受託者の権限義務 | 受託者にどのような権限を与えるかを詳しく決めておく |
信託期間 | 信託契約の期間。「当初の受益者が死亡するまで」など |
残余財産の帰属先 | 信託終了後に信託財産を取得する人 決められない場合「相続人で協議する」など |
まとめ
もし、認知症になってからでは、相続対策もできません。
ご両親が施設に入ってお金がかかっても、売りたい不動産も売却できません。
所有しているアパートの修繕すらできません。修繕をしなければ
入居率も悪くなります。
司法書士や弁護士に依頼してから手続きが2~3カ月かかります。
ご両親が健康で元気な状態のときは家族信託の手続きも必要ない
かもしれませんが、体調が悪い、ちょっと心配な時には
早めの「家族信託」の手続きをおすすめします。
コメント